WOODLAND-TRAIL
トップページ林道ツーリングレポート076 白神山地・藤里の林道〜ブナの森を行く〜/秋田県


白神山地・藤里の林道〜ブナの森を行く〜 / 秋田県

林道ツーリングレポート (076/'06.8.9〜11)
( 観 光 ガ イ ド 的 簡 易 レ ポ )


 広大なぶなの原生林を持つ「白神山地」の麓での夏休み。
近頃になって、出かける機会は以前と変わらないか、むしろ増えたような気もしますが、あまり遠方に出ることが少なくなりました。国内の一般的な名所的なところは、既にほとんど回ったからなのか、比較的近距離の林道だけでも、なかなか奥深くて遠くまで行けなくなってしまったからなのか。ともかく、久しぶりの北東北滞在です。
今回は完全なバカンスという趣旨ですので、林道も通り道として走ってはいますが、その林道の最後まで走ろうとか、詳しい距離はどうだろう・・・とか積極的には走っていませんし、今回のエリアは白神山地の山麓で、著名なスポットではありますが、このサイトでカバーすべきと考えているエリアより、かなり外ということになるので、いつものようなスケジュールを追ったレポはせず、参考程度にポイントを絞っての現地紹介的なところにとどめさせていただきました。


1 プロローグ
 (1) 秋田県北部、白神の麓へ
秋田自動車道 藤里町役場
高速道も延びたものですね。一部対向1車線ずつとはなりますが、秋田道はいまや南能代まで供用されています。時間があれば、各地方の情緒に触れられる下道のほうが楽しいのですが、今回は、遠方の割りに限られた時間内であったため、その出来る限りを今回楽しみたい主体の現地で使おうと、行き来は高速を使いました。
藤里町は、能代市中心部から東に20kmほどにある元二ツ井町(現在能代市に合併)から、県道317号線で入ったところにある、周囲をまったくの山で囲まれた国道も鉄道も通っていない町です。そればかりか、今回の訪問時期には、県道が青森県側で通行止めであったこともあって、実質的には二ツ井からの県道317号線が唯一の交通手段ともいえるところです。
現地入りした後は、早速、町役場で町の状況・名所案内などの資料収集を行います。平日の旅行では、いつもよくやっていることですが、今回はちょっと失敗です。私はカメラを持って歩き回りますが、ここ秋田県の藤里町と言えば、少し前の例の事件のあった地です。その後遺症が色濃く残っていて、カメラをぶらさげた見かけない顔が役場に入ってくるなり、何か異様な空気でこちらに注視。ああ、これはいかんと用を済ませてさっさと退散しました。

 (2) 藤琴川で遊ぶ
藤琴川 川の中
カワゲラの抜け殻 カジカガエル
町を流れる大きな川は、藤琴川と粕毛川(4の素波里エリアを参照)。魚の影が多く、あゆ釣りをしている姿も多く見かけるこの川で、ちょっと川遊びしながら、水中撮影のテスト。なかなか好調に撮影できてうれしいです。
カワゲラの抜け殻はこういう川には付き物ですが、ちょっと探すと、だいぶたくさんありました。河原では、ほかにカジカガエルが、炎天下に眠たそうな顔で石の間から顔をのぞかせていました

2 太良峡から釣瓶落へ峡谷の道をゆく 〜太良峡エリア〜
 (1) 太良峡
太良橋 橋下の渓流
太良峡は、そそり立つ奇岩やひときわ白い滝が美しい渓谷。藤琴川に沿って1kmほどの遊歩道もあり、爽やかなその沢の周囲を歩くだけでも心和みそうです。県道317号線が渓谷を渡る赤い橋、この太良橋の先からが太良峡となります。

 (2)旧藤琴林道(県道317号線)
一通沢林道(左方向)の分岐 黒石林道(左方向)の分岐
林道沿いの白石沢
ダートも残るが…
舗装工事が進行形 県境の釣瓶落トンネル
県道317号線は、以前は藤琴林道であったのが県道に昇格した道で、林道であった時代の起点は上記の太良峡より下流の一の坂林道基点付近だったようで、少し前までは、ずっとダートの続く道でした。今では舗装工事が進み、ダートは、秋田県側で既に2km程度しか残されておらず、それも現在も工事中で全線舗装化も間近でしょう。
県境の峠は釣瓶トンネルで向こうは青森県です。この峠の名は釣瓶落(つるべおとし)峠といい、その名のとおり急峻な谷底を望み、また、紅葉期は大変すばらしい景観であるようです(小駐車場あり)。
この旧林道から分岐派生する林道は、進行方向上りで左には、一通沢林道や黒石林道があり、右方向には、太良橋の手前で分岐し、関東の林道屋さんでも名前くらいは聞いたことがある、この地方で一番著名なロングダート「田代相馬林道」へと続く道がありますが、ここは入口に通行止ゲートなどはなかったものの、進入しないよう表示があったため、ちょっと残念ですが今回走れませんでした。

3 ブナの森、白神山地へ 〜白神エリア〜
 (1) 黒石林道
起点(県道317号線からの分岐点) 真名沢林道(右方向)の分岐
東又林道(直進方向)の分岐 夏の林道らしい風景
黒石林道は、旧藤琴林道と分岐して、駒ケ岳のふところ、田苗代(たなしろ)湿原へと続く10km近いダートの道です。旧藤琴林道が白石沢沿い、こちらは黒石沢沿いとなります。観光利用もあって、路面はかなりよく整備されていました。
沿線に見所等は多く、くるみ台野営地や、岳岱自然観察教育林、田苗代湿原、そして駒ケ岳登山口など、白神山地探訪のひとつの中核となる道です。
この林道からは、手前から、カタリ山林道、真名沢林道、そして東又林道と、いずれも右方向に分岐します。これら分岐する林道は今回走っていませんが、地図その他で見ると、カタリ山林道は短い行き止まりの林道、真名沢林道は、地図上でも確認出来ず不明、東又林道は、どこまで走れるのかはわかりませんが、黒石林道と分岐後4-5kmは続いているようです。

 (2) くるみ台野営場
キャンプ場の広場の1つ 場内案内図
黒石林道が旧藤琴林道から分岐後、約1.5kmほどの地点の林道沿いにある、1960年代に開設された国有林内の無料国設野営場です。今回は1日目の昼食での休憩に利用させてもらいましたが、黒石沢に沿って、テントサイトや炊事場などが設けられていて、背の高いサワグルミの林囲まれた、とても環境のよいキャンプ場でした。
北東北では、こういった無料野営場は多く、周辺の環境も素晴らしいところばかりです。関東甲信越方面にあったならオフ会利用に最適ですが、それなりに人が多いですから・・・(捜せばあるのかな?)。

 (3) 岳岱自然観察教育林
黒石林道の先に見える駐車場とトイレ ブナの樹を見上げる
若いブナ林 「白神のシンボル」の標
黒石林道が旧藤琴林道から分岐後、約6.3kmほどの地点の林道沿いにあります。大きな岩と苔に覆われた大地に生えるブナの原生林の姿をよくとどめていて、立ち入りできない世界遺産登録地コア部の趣を体験できます。1.8kmの概ね平坦な自然観察路が整備されていて、一回りしてみましたが、ほんとうに素晴らしい景観でした。樹齢400年という「白神のシンボル」とされるブナの巨木もすばらしく、時のたつのを忘れるほどです。
→ブナの森・白神のシンボルの大きな画像はこちら

 (4) 田苗代湿原
黒石林道終点/湿原入口の駐車場
コバギボウシ 湿原と木道
田苗代湿原は、全長約9.8kmの黒石林道の終点にある駐車場に車を止め、そこから400mほど山に入ったところになります。また、ここは白神山地でも有数の高峰である駒ケ岳(標高1,157.9m)の登山口としても利用されます。
湿原は広大というほどではありませんが、2、3の湿原に分かれていて、登山道兼用で一本の木道で縦断できるようになっています。8月初旬は花の切り替わり時期で谷間ではありましたが、薄紫のコバギボウシの花がいたるところに咲き誇って楽しませてくれました。ミズバショウの葉はツキノワグマが食痕が多くあって、ここが既にクマの生活領域内であることを知らせます。観光化で人がこの地に立ち入るのは、できるなら、今の状態くらいまでにしておいたほうがいいのでしょうね。そういう意味でも、黒石林道は未舗装で残しておいて欲しいものです。

4 プレイ・ゾーンと長大な未舗装林道 〜素波里エリア〜
 (1) 素波里湖
渇水中のダム湖 湖畔に咲いていたノハナショウブ
素波里ダムは1970年に建設されたダムで、白神の山麓に三日月形の素波里湖を形成しています。また、湖畔には、国民休養地として素波里園地が整備され、キャンプ場、テニスコート、ガーデンゴルフ、自然公園センター、自転車など、無料施設も含めたプレイゾーンになっています。
今回は、この湖でカヌーを予定していましたが、あいにく水がかなり少なく、通常の水面下になる湖底の岩肌などが現われて、荒涼とした景観はあまり優れたものでなかったので、残念ながらパスとなりました。それでも、水場まで降りられるところを見つけられれば、なにがしか、興味のあることはあったのでしょうが、肝心の水面までも降りるところが見つかりませんでした。ちなみにこのダムでのカヌーは、あまり歓迎されるとは思いませんが、禁止されているわけではなく、通常水位ならば、降りるところもいくつかあるそうです。
近隣の湖沼でのカヌーはこちら
 (2) 粕毛林道〜大滝林道
粕毛林道基点 粕毛林道の中間付近
素波里湖の湖岸から山中深くへ分け入る林道群です。粕毛林道は、素波里園地の先から始まって、冷水岳のすぐ下まで延々と続くロングダートですが、途中から通行は禁止となり、さらに奥に入るには、そこから分岐している大滝林道にスイッチして進むことになります(上記地図参照)。大滝林道も小岳への登山口となっていますが、駐車場のあるところでそこから先は進入禁止となります。これらの道は、本当に名実ともに山深い道であり、谷や尾根を縫って走る本格的な林道で、しかも行き止まりの往復路ですから、全線を走りきるのはかなり時間が掛かりそうです。
これら2つの林道から分岐する林道は、林道入口側から、大開林道(右)、内川林道(右)、奥素波里林道(左)、樺岱林道(右)、一ノ又林道(左)など多数あって、走距離はかなりのものとなるでしょう。

5 町の中心部周辺でも豊かな自然に囲まれて 〜湯ノ沢エリア〜
 (1) ぶなっこ教室
今回の宿泊場所 昔の小学校そのものの外観
施設内も学校のまま 学校前の藤琴川と坊中橋
今回のこの地方訪問では、ちょっといつもと趣の変わったところに宿をとりました。次に出てくる世界遺産センターや温泉のある湯ノ沢エリアにある「ぶなっこ教室」で、ここは、藤琴川のほとりにあり2000年に廃校となった旧坊中小学校の校舎を利用した建物で、基本的には子供や子供連れの親御さんたちを対象とした自然体験教室を開催しています。豊かな四季の自然に合わせた夏の学校、秋の学校、雪(春)の学校などを開催していますが、一般の宿泊も可能です。
少人数の教室スタッフの手作り感いっぱいで、豪華設備とは無縁ですし、かといって、野営ほど野趣があるというわけでもないのですが、のどかな川沿いの環境の中、懐かしい学校施設で、地元の山菜などをふんだんに使った、質素でもおいしい食事など、夏休みをのんびりするには最適のところでした。すぐ川向にある温泉の利用も便利ですので、低料金で、でも野営はちょっと・・・というニーズにはぴったりです。 →宿のサイト →宿泊情報

 (2) 白神山地世界遺産センター & ホテルゆとりあ藤里(湯の沢温泉)
世界遺産センター ホテルゆとりあ藤里
湯の沢温泉のホテルを含む数件の宿の手前、県道に面して世界遺産センター(入館無料)があります。ここでは白神山地の自然、世界遺産についてよく分かる展示と説明が見られました。白神入山前の予備知識を仕入れるのにいいでしょう。
温泉は、
ホテルゆとりあ藤里のほか、町営の温泉保養所、民宿・旅館で入湯できます。

 (3) 峨瓏峡・峨瓏の滝
峨瓏の滝 ミヤマカワトンボ
温泉の湯の沢地区より少しだけ県道を北上すると、ここもまた、県道沿いに駐車場があって、すぐそばに峨瓏の滝という涼しげなポイントがあります。今回は渇水期でしたが、水量豊富な時期には、なかなか立派な滝であるようです。滝つぼには赤茶色の翅がきれいなミヤマカワトンボがたくさん飛んでいました。
この滝の上流は峨瓏峡といい白糸二段の滝など渓流美を堪能できます。

 (4) 滝の沢林道
林道南側入口 明星院林道(右方向)の分岐
イワナ…ですか?やけに赤いですね 林道中間付近
林道から望む白神の山々
(3)の峨瓏の滝のすぐ隣に、県道からの滝の沢林道入口が見えます。滝の沢林道の南側入口になり、ここから山の中腹をずっと巻いてきて、次の一の坂林道に繋ぐと、藤琴川に沿って走る県道に5kmほど上流で戻ってくることが出来ます。
この林道は初め渓流に沿って、比較的急に上った後、明星院林道(右)、行人沢林道(左)、スベリ沢林道(右)と分岐しながら北上し、最後は、県道から上ってくる一の坂林道に合流するまで13.5kmのダートを持つ林道です。特別大きなな見所や眺望は少ないですが、小さな清流や、白神山地を広く望めるポイントなどもありました。

 (5) 一の坂林道
滝の沢林道(手前)と一の坂林道の出合点 県道317号側の起点(正面は県道)
上記2の(2)の旧藤琴林道の林道時代の起点になっていたゲートでしょうか、ともかく、県道317号線も山間部に入る直前にゲートがあって、そのすぐ手前に一の坂林道の入口があります。入口から6km程度、山に分け入ってゆく林道で、途中で(5)の滝の沢林道と接続していますので、この2つの林道を繋げば、往復にならず走り抜けが可能です。

6 エピローグ
 (1) 夏の盛りと忍び寄る秋
アラゲハンゴンソウの大群落 栗の実
今回は山と山村での夏らしさを感じることが出来る日々となりました。それでも、8月という時期は、少しずつ秋が近づいているようです。夏の花でもありますがハンゴンソウの黄色はなんとなく秋の気配がしますし、栗の実も、次第に大きくなってきています。これらも季節の移ろいを感じさせてくれる情緒あるものたちですが、ちょっと寂しい気持ちも・・・。個人的には、季節の変わり目で、夏→秋だけは好きになれないんです。

 (2) きみまち阪
ダートの坂から見下ろす 蛇行する米代川
楽しんだ藤里町の山と川に別れを告げて、二ツ井まで出てきました。ここに宿のぶなっこ教室で教えてもらった「きみまち阪」があるというので立ち寄ってから帰ります。坂に沿って全体が公園のようになっていて、道は途中から未舗装、見下ろす景色は良好です。
特に藤琴川も合流する米代川が山を縫って蛇行して流れるさまは素晴らしい景観です。
このあと能代の街中を少々市場調査して、長い帰路につきました。


いつも関東周辺で、ダート林道を探して走っている印象から言えば、この地方では、あえて探すこともなく、林道はほとんど未舗装で、かつ走行可能という感じでした。主な林道だけでも上記の地図を見ていただければわかるように、エリア内にくまなく走っています。これは、関東甲信越方面とは違い、国有林道のほとんどが開放されたままであることが、一番の大きな違いとなっているのでしょう
ともかく、天候に恵まれ、いかにも夏らしく暑くはありながらも、すがすがしい山と渓流に楽しい数日を遊ぶことができました。




林道ツーレポ入口に戻る

トップに戻る

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送